介護の相談と働き方の相談をつなぐ
ケアマネジャーと人事は、仕事と介護の両立を異なる立場から支えます。社員が介護サービスについて相談できても、職場の勤務調整まで自動的に決まるわけではありません。
ケアマネジャーは介護支援専門員とも呼ばれ、介護サービスの利用に関わる計画や調整を担います。人事は会社の制度、働き方、業務上の調整を担当します。本人と家族の希望を中心に、それぞれの領域でできることを整理するのが出発点です。
以下は役割を分けるための運用例です。サービスの利用状況や地域によって関わる支援者は異なり、全員に担当ケアマネジャーがいるとは限りません。まだ相談先がない場合は、地域の相談窓口を探すところから進めます。
役割表は相談を断るために使わない
社員からサービスの内容を質問されたとき、人事が専門的な判断を代行する必要はありません。ただし「会社ではわかりません」で終えると、社員が困ったままになります。誰に確認するとよいかと、会社が同時に調整できることをセットで伝えます。
たとえば「通所サービスが決まらず朝の出勤に間に合わない」という相談なら、サービスの調整はケアマネジャー等へ、始業時間の取り扱いは人事へ、という二つの論点があります。どちらかの結論を待つ間も、今週の働き方について話し合えます。
役割表には担当者だけでなく、回答が得られない場合の戻り先を記載します。社員が同じ説明を何度も繰り返さないよう、社内では窓口をまとめる方法が考えられます。
| 地域の専門職に相談すること | 介護サービスの選択・調整、家族の生活上の困りごと。 |
|---|---|
| 会社が調整すること | 勤務時間、休暇等の手続き、担当業務、職場への共有範囲。 |
| 本人が希望を伝えること | 続けたい仕事、難しい時間帯、家族との役割分担の見通し。 |
人事面談では時間と業務への影響を聞く
人事が知りたいのは、介護内容の詳細そのものより、働くうえでどんな調整が必要かです。「何時から何時まで対応が必要か」「予定が決まるのはいつか」「急な連絡で離席することはあるか」と聞くと、具体的な勤務案に結びつきます。
本人がまだわからない場合は、確定事項と未定事項を分けます。親の状態から人事が介護時間を推測するのではなく、本人が相談先で確認した内容をもとに見直します。休日を含め家族対応が続く場合は、勤務の長さだけでなく休息を取れているかも話しやすい範囲で確認します。
面談の文例:「ご家族の詳しい病状をすべて話していただく必要はありません。出勤や連絡に影響する時間帯と、会社で調整したいことを教えてください。まだ決まらないことは、次回一緒に確認しましょう」。
働いていることを専門職に伝えるメモを作る
社員が専門職へ相談するとき、勤務時間や通勤時間を伝えると、家族対応に使える時間を説明しやすくなります。会社は、本人が希望すれば勤務条件を整理する支援ができます。ただし会社がサービスの内容を指定する文書にはしません。
メモには、通常の勤務、調整できる範囲、調整が難しい場面、希望する連絡時間帯を記載します。「平日の昼に電話に出られないため、折り返し時間を相談したい」など、本人の希望を具体的にします。専門職の対応時間やサービスの空きによっては希望どおりにならないこともあるため、複数の案を持つと相談しやすくなります。
記入例:「通常は九時から十八時に勤務。水曜は時間変更を職場と相談中。急な連絡は留守番電話に残していただき、休憩時に折り返したい」。この例の勤務時刻や調整方法は、特定企業の実例ではありません。
直接連絡する場合は目的と情報を限定する
会社とケアマネジャー等が直接話すことを本人が希望する場合、まず目的を明確にします。「勤務調整に必要な時間の見通しを確認する」など、連携が必要な論点を絞りましょう。本人を外して会社と専門職だけで生活や働き方を決めることは避けます。
誰が参加するか、共有する項目、記録の保管先、次回連絡の方法を事前に確認します。家族に関する情報も含まれるため、必要な同意等の確認を行い、会社が保有する人事記録や給与情報を一括で提供しないようにします。
連絡が難しい場合は、本人が持ち帰れる短い質問メモで足りることもあります。直接会議を開くこと自体を目的にせず、本人の負担が少なく、必要な調整が進む方法を選んでください。
家族の病歴などは、その家族の要配慮個人情報に当たり得ます。社員が連携を希望したことだけで家族情報の取得・提供を一律に進めず、情報管理担当者が同意等の必要な手続を確認します。会社へ戻す情報も、勤務調整に必要な範囲を先に決めておきます。
介護の変化と会社の見直し時期を合わせる
サービスの利用開始、退院、家族の役割分担の変更などがあると、必要な働き方も変わります。人事は「今後ずっと同じ条件」と決めつけず、勤務案を試す期間と見直し日を本人と設定します。
確認するのは、予定どおり働けたかだけでなく、見えない持ち帰り仕事や夜間の対応が増えていないか、周囲の業務が偏っていないかです。調整が合わなければ、本人の努力不足と評価する前に、業務量や連絡方法を変えられないか検討します。
まず人事の相談票を見直し、介護の詳細を集める欄より、仕事上の希望、未定事項、次の担当者を書く欄を充実させましょう。役割の違いがわかる相談票は、外部支援と社内対応をつなぐ道具になります。
専門職へ確認する質問も、優先順位をつけましょう。今週の出勤に影響する時間を先に確認し、長期の働き方は見通しが得られてから相談する方法があります。質問を一度に多く渡すと本人の負担が増えるため、人事は会社側で確認できる内容を先に整理しておきます。本人にお願いする確認事項と、会社が回答する事項を分けて記録すると実行しやすくなります。
出典・参考資料
- 厚生労働省|企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省|地域包括ケアシステム・地域包括支援センター ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省 job tag|介護支援専門員・ケアマネジャー ↗確認日:2026年10月9日
- 個人情報保護委員会|個人情報保護法ガイドライン(通則編) ↗確認日:2026年10月9日



