介護ハラスメントは制度利用と職場環境の問題

介護ハラスメントを防ぐには、管理職の言葉遣いだけでなく、相談や制度利用を妨げない職場の仕組みが必要です。会社は、相談窓口の整備や方針の周知などを、実際に機能する形で運用する必要があります。

「介護ハラスメント」は日常的に幅広く使われる言葉です。本記事では主に、職場での介護休業等に関するハラスメントを扱います。厚生労働省は、介護休業等に関するハラスメントの防止措置を講ずることを事業主の義務と案内しています。また、制度利用等を理由とする不利益な取り扱いの禁止と、ハラスメント防止は区別して確認する必要があります。

以下の会話例は、予防のための架空の例です。具体的な言動が法的にどう評価されるかは、経緯や状況を含めた確認が必要であり、例文だけで違法性を断定するものではありません。

善意のつもりの発言も本人の希望を置き去りにしない

介護の相談に対して「大変なら辞めたほうがよい」「昇進はもう考えなくてよい」と先回りすると、本人は仕事を続ける希望を伝えにくくなります。本人の希望を聞き、制度と調整できる選択肢を説明することが基本です。

また、「ほかの人に迷惑がかかる」「代わりを見つけてから申請して」といった発言は、制度利用をためらわせる原因になり得ます。人手不足の課題を、その社員への非難で解決しようとしないことが重要です。

言い換え例:「今後も続けたい仕事と、調整が必要な時間を教えてください。制度は人事と確認し、業務の分担は管理者側で検討します」。その場でできない約束をする必要はありませんが、誰が何を確認するかを明らかにします。

方針と相談窓口を社員が使える形にする

厚生労働省の資料では、方針の明確化と周知、相談体制、事後の適切な対応、プライバシー保護等が防止措置として整理されています。社内規程に書いたことだけでなく、社員が窓口を知り、相談した後の対応がわかる状態にすることが必要です。

直属の上司が相談の相手方である場合も想定し、別の経路を用意します。相談をしたことや事実確認に協力したことを理由に不利益を受けない旨も、方針と整合する形で伝えます。

担当者が不在のとき、相談メールを誰が確認するかも決めておきます。受付記録には、相談日時、連絡方法の希望、差し迫った勤務上の困りごと、次の連絡予定を残し、詳細な情報の閲覧者を限定します。匿名の相談をどう扱うかは、調査できる範囲を含めてあらかじめ説明できるようにします。

相談を受けたら結論を急がず必要な対応を分ける

受付時には、相談内容を否定したり「悪気はなかったはず」と相手を擁護したりせず、本人の説明を聞きます。同時に、勤務を続けるうえで差し迫った問題がないか確認します。

事実確認では、発言や行動、日時、場所、関係者などを整理します。記録を残す際は相談者の言葉と担当者の解釈を区別し、必要な範囲で関係者への確認を進めます。調査の進め方や情報の共有先は、会社の方針と専門家の助言に基づいて判断します。

会社としての判断が出るまで何もできないわけではありません。業務の連絡経路の変更など、当面必要な措置を検討し、相談者だけに負担や不利益が集中しないか確認します。詳細な調査や処分については、適切な専門家と連携してください。

初回受付でハラスメントに当たるか明確でない相談も、直ちに対象外とせず広く受け止めます。必要な事実確認と当面の配慮を分けて進め、本人に調査結果や処分を約束しないようにします。相談記録へのアクセスは担当業務に必要な人に絞り、事実確認への協力を理由とした不利益な扱いが生じないよう対応します。

受付時 希望する連絡方法と、当面困っている勤務上の問題を確認する。
確認時 発言や行動の事実と、受け止め・推測を区別して記録する。
対応後 本人への連絡、職場の再発防止、追加相談の窓口を確認する。

周囲の負担には業務の調整で対応する

同僚に追加の仕事が生じている場合、その負担を無視して「理解しましょう」と伝えるだけでは不満が残ります。管理者が業務量を確認し、優先順位の変更、担当の分散、代替者への権限付与などを検討します。

本人の家庭事情を詳しく公開して納得してもらう方法は避けます。チームに必要なのは、誰がどの仕事を担い、困ったときに誰へ相談するかです。負担の相談は、介護する社員を責める場と分けて受け付けます。

管理職研修でも、禁止される言動の知識に加えて、欠員時の業務配分を練習すると役立ちます。架空の勤務表を使い、延期できる仕事、管理者が引き受ける判断、応援が必要な時間帯を話し合う方法が考えられます。

防止策は相談後の職場まで確認する

注意喚起や研修を行った後も、相談者が孤立していないか、必要な情報から外されていないか、制度を使いにくくなっていないかを確認します。相談の件数が減ったことだけを改善と見なさず、相談経路へのアクセスも点検します。

会社で対応が進まないときの外部相談先として、厚生労働省は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)等を案内しています。社内だけで抱えず、相談内容に合う窓口や専門家へつなぐことも必要です。

まず管理職向けの対応文例と、相談後の担当者・期限を点検してください。社員の制度利用を尊重する方針と、仕事を回す具体的な準備を両方整えることが、防止策を職場に根づかせる出発点になります。

窓口担当者への研修も必要です。相談者がまだ整理して話せない場合に、出来事を順番に確認できるよう、受付の進め方を練習します。相談を取り下げたいと言われたときも、理由を責めず、本人の希望と会社として必要な対応を分けて専門家と検討します。すぐに結論を伝えられない場合は、次の連絡予定を示し、相談が放置されたと感じさせない運用を整えます。

出典・参考資料