ビジネスケアラーは働きながら家族を介護する人
ビジネスケアラーは、仕事をしながら家族の介護に従事する人を指す言葉です。経済産業省もこの意味で使っています。会社が認定する資格や、特定の休業制度を利用している人だけを表す名称ではありません。人事がこの言葉を使う際は、まず何を意味するか短く説明しましょう。
日常の呼びかけでは「家族の介護や見守り、通院の付き添いなどと仕事の両立に不安がある方へ」と具体的な場面を添えると、自分に関係があるか考えやすくなります。本人が「まだ介護ではない」と感じていても、仕事の調整に困っていれば相談できる入口が必要です。
ただし、広く相談を受けることと、法定制度の利用対象になるかは別の話です。制度の利用要件は、それぞれの制度と本人の状況に照らして確認します。言葉に当てはまるかどうかだけで、利用可否を判断しないでください。
本記事は用語と相談の入口を整理する基礎記事です。支援全体の導入手順や窓口の設計は、末尾の関連記事で確認できます。
身体的な介助以外にも仕事と重なる場面がある
人事が把握したいのは、家庭で何を何時間行っているかという詳細だけではありません。例えば平日の日中に関係者との連絡が集中する、急な付き添いで予定変更が起きる、遠方への移動が必要になるといった場面は、業務の組み方に関係します。これらは説明のための例で、すべての介護者に当てはまるわけではありません。
相談では「どんな介護をしていますか」だけで終わらず、「今の勤務の中で調整が必要な場面はありますか」と聞きます。時間帯が問題なのか、場所なのか、予定の見通しなのかが分かると、検討する選択肢も変わります。
外から見た忙しさで負担を決めつけないことも大切です。同居か別居か、きょうだいがいるかという情報だけでは、実際の役割は分かりません。本人が困っている点と希望する働き方を中心に、話せる範囲で整理しましょう。
申告がないことを、課題がない根拠にしない
介護の相談が寄せられていなくても、社内に課題がないとまでは言えません。相談先を知らない、自分の状況が相談対象か分からない、評価への影響を心配している、といった複数の可能性を考えられます。原因を決めつけず、案内がどう受け取られているか確認します。
「介護中の人は必ず申告してください」という一律の呼びかけより、相談できる内容と利用の流れを見せる方法を検討しましょう。例えば「今すぐ休業を希望していなくても、働き方の相談ができます」と伝えれば、休業の申請と相談が別の入口であることが分かります。
管理職が部下の家族状況を推測して聞き回る運用は避けます。全員に同じ案内を届け、本人から話が出たときに対応できる準備をします。相談情報の閲覧者、利用目的、職場への伝え方も具体的に説明できる状態にしておきます。
企業と介護の専門職で担うことを整理する
企業は、勤務予定や担当業務、利用できる社内制度など、仕事側の調整を検討します。家族の生活支援や介護サービスの相談については、地域の窓口や介護の専門職につなぐという役割分担を基本にすると、担当者が一人ですべての答えを出そうとせずに済みます。
厚生労働省の実務的な支援ツールでは、会社の窓口が働き方・休み方の相談を担い、介護そのものの相談を地域包括支援センターやケアマネジャーにつなぐ考え方が示されています。家族の住む地域に合う相談先を確認する視点も必要です。
例えば本人がサービスの相談先を知っていても、勤務の調整は未解決かもしれません。「専門家に相談したから会社の対応は終わり」とせず、仕事側で次に決めることを残します。反対に、会社が利用する施設や介護の方法を本人に代わって決める進め方にも注意しましょう。
社内への説明は、誰でも利用できる入口から
社内説明の例として、「家族の介護や生活の支援が必要になったときは、今後の勤務について人事へ相談できます。事情が整理できていない段階でも構いません。制度の申請が必要な場合は、担当者から手続をご案内します」といった表現が考えられます。実際の受付体制に合わせて書き換えてください。
従業員向けには、用語の理解を試すより、連絡先を持ち帰ってもらうことを優先します。相談手段を一つに限定すると使いにくい職場もあるため、勤務形態や社内端末の利用状況に合わせて案内方法を考えます。
管理職向けには、部下に利用を勧められるよう、窓口への連絡方法と人事への引継ぎ手順を説明します。本人の希望を確認する前に異動や業務削減を決めないこと、情報共有の範囲を慎重に扱うことも、同じ資料に含めると実務に結び付きます。
支援の対象を狭めず、制度の説明は正確にする
ビジネスケアラーという言葉を導入しても、年齢、性別、役職だけで支援対象を限定しないことが大切です。誰に何が起きているかを会社が先回りして判断するより、困ったときに相談できる仕組みを広く知らせます。そのうえで法定制度の適用は個別に確認します。
最初に整える資料は、難しい用語集でなくても構いません。「相談できる場面」「連絡先」「受付後の流れ」「情報の扱い」の四項目を、一画面または一枚にまとめると使いやすくなります。研修資料と窓口ページの説明が食い違わないよう、同じ担当者が更新管理します。
担当者はその案内を、介護の知識がない同僚にも読んでもらいましょう。自分の困りごとで相談してよいか、誰に連絡すればよいかが伝われば、入口として機能しています。用語の普及とともに、行動につながる案内を整えることが人事の実務です。
出典・参考資料
- 経済産業省|仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン公表 ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省|企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール ↗確認日:2026年10月9日
- 経済産業省|仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン(2026年3月改訂案内) ↗確認日:2026年10月9日



