最初の面談で、すべての結論を出さなくてよい
部下から介護の相談を受けたとき、管理職がその場で制度や介護サービスの答えをすべて出す必要はありません。まず相談を受け止め、今日の業務に影響すること、本人が希望すること、人事へ確認することを整理します。厚生労働省も相談時の対話例を公開しています。
最初の言葉の例は「話してくれてありがとうございます。今の仕事で、すぐ調整が必要なことから一緒に整理しましょう」です。本記事の会話例は編集部が作成した仮想例です。相手との関係や状況に合わせ、機械的に読み上げずに使ってください。
周囲に聞こえる場所なら、別の場所で話すことを提案します。急ぎの要件だけその場で確認し、詳しい話をする時間を別に設けてもよいでしょう。本人が十分に説明できない場合も、事情を整理してから来るよう突き返すのではなく、分かる範囲から確認します。
確認するのは、当面の制約と本人の希望
最初は「今週の勤務で困っている場面はありますか」「いつまでに決める必要がありますか」「どのような働き方を希望していますか」という順で確認すると、業務上の課題を整理しやすくなります。将来の介護期間をその場で確定するよう求めないことも大切です。
例えば本人が退院への付き添いで一日休みたいと話した場合、必要な休暇の案内を人事へ確認しつつ、その日の業務の引継ぎ先を検討します。これは運用の例で、特定の休暇が必ず適用されることを意味しません。制度の要件は人事が確認します。
家族の詳しい病状を質問する前に、勤務の検討に本当に必要か考えます。分からない点は「制度の案内に必要な確認事項は人事から説明します」と分けられます。家庭の役割分担に管理職の価値観を持ち込み、「他の家族ができるはず」と結論付けないようにします。
励ましのつもりの言葉にも気を付ける
「介護なら仕事を減らしておく」「家族を優先して辞めた方がよい」と、本人の希望を聞く前に選択肢を決める言い方は避けます。善意でも、本人が続けたい仕事や今後のキャリアを話しにくくなることがあります。経験者であっても、自分の家庭で可能だった方法をそのまま勧めないようにします。
代わりに「続けたい業務や、変えずにおきたいことはありますか」と確認できます。負担の軽減だけでなく、本人が維持したい働き方も検討材料にします。勤務上の制約があることから、能力や意欲まで決めつけない姿勢が必要です。介護休業等の申出・取得を理由とした解雇などの不利益取扱いは禁止されています。制度の利用を控えさせる言動を避け、評価や配置に迷う場合は人事へ確認します。
また「絶対に誰にも話さない」と約束すると、人事との手続や調整が必要になった際に困ります。「調整に必要な共有がある場合は、相手と内容を先に説明し、ご意向と必要な手続を確認します」と伝え、実際の社内ルールに沿って対応しましょう。守れない約束をしないことが信頼につながります。
人事への引継ぎでは、未決事項を明確にする
管理職から人事へつなぐ際は、本人の同意や社内の情報管理ルールを確認したうえで、勤務上の希望、急いで確認したいこと、連絡方法を整理します。「介護相談あり」とだけ伝えると、何をいつまでに確認すべきか分からず、本人に同じ説明を繰り返してもらうことになります。
引継ぎ文の例は「本人から来週の勤務について相談あり。利用できる制度の説明を希望しています。業務の引継ぎは当方で調整します。人事から連絡可能な時間を本人と確認済みです」です。病名などを詳しく転記する必要があるかは慎重に判断します。
人事につないだ後も、業務の調整は管理職の担当として残ります。「人事に聞いて」で会話を終えず、本人に次の担当者と連絡予定を伝えます。制度の判断が未確定でも、当面の予定や業務の優先順位について、検討可能な範囲を整理しておきましょう。
同僚への説明は、仕事に必要な内容に絞る
職場には、誰がどの業務を担当するか、いつまでの調整か、質問をどこへ寄せるかを伝えます。家族の介護状況を詳しく知ることが、業務協力の前提になるわけではありません。本人と確認した内容をもとに、必要な範囲の説明を用意します。
仮想の説明例は「今週は担当業務を一部調整します。問い合わせ対応は私が振り分けます。負担が増えた場合は個別に相談してください」です。本人に全員へ事情を説明させる方法だけに頼らず、管理職が分担の調整を担います。
業務を引き受ける側の負担も確認します。同じ人に仕事が集まっていないか、期限を変えられる作業はないか、一時的に止められる業務はないかを見直します。協力者の善意だけで維持するより、仕事の量と優先順位を整理する方が継続しやすくなります。
面談の最後に、次回の確認を決める
面談は、今日決まったこと、確認が必要なこと、次に話す時期の三つをまとめて終えます。「何かあれば言って」で終えるだけでは、本人が再び話を切り出す負担が残ります。予定を固定しにくい場合は、いつ頃、どの手段で連絡するかを決める方法もあります。
記録には、本人の希望、合意した業務調整、人事への確認事項、次回確認日を残します。家庭事情に関する推測や評価は書かず、閲覧できる人を限定します。記録を残す目的は、本人が何度も説明しなくても対応を続けられるようにすることです。
管理職自身が困ったときの相談先も、人事が用意しておくと実務が進みます。初動対応の成功は、問題を一度で解決することではありません。本人の希望を聞き、当面の仕事を整理し、必要な確認へつないで次の約束を守ることから始まります。
| 今日決まったこと | 当面の勤務予定・業務分担を双方で確認する。 |
|---|---|
| 人事への確認事項 | 利用を希望する制度、未確定の条件、返答予定を整理する。 |
| 共有する情報 | 相手・目的・必要最小限の内容を確認し、必要な同意等の手続を行う。 |
| 次回の連絡 | 日時または目安と連絡手段を決め、状況が変わった場合の連絡先を伝える。 |
出典・参考資料
- 厚生労働省|介護に関する相談を受けた場合・相談時の対話例編 ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省|介護に関する相談を受けた場合・会社の対応ポイント編 ↗確認日:2026年10月9日
- 個人情報保護委員会|個人情報保護法ガイドライン(通則編) ↗確認日:2026年10月9日




