93日は介護が終わるまでの期間ではない
介護休業93日という数字を見て、「その間に家族の介護を終わらせる必要がある」と考える必要はありません。介護は長期化することもあり、休業期間を使って仕事と介護を続けられる体制を整える視点が大切です。
厚生労働省は、休業を介護サービスの手配や家族の分担などを整える準備期間として活用することを案内しています。人事も「いつ介護が終わるか」だけを聞くのではなく、復帰後の生活と勤務を支える条件を一緒に整理しましょう。
本記事では法定の取得枠を確認したうえで、休業中の計画を立てる方法を提案します。家族の状況を会社が決めるのではなく、本人が外部の支援者と調整するための時間と、職場側の準備を分けて考えます。休業取得をためらわせる目的で、日数を温存するよう求めることは避けてください。
日数は対象家族ごと、回数は3回までと整理する
法定の介護休業は、対象家族一人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。年ごとに93日が新たに付与される制度ではなく、同じ対象家族についての取得履歴を継続して確認します。介護休暇の年度ごとの残日数管理と混同しないようにしてください。
編集部の管理案では、対象家族ごとに開始日、終了日、取得回数、使用日数、残日数を一覧化します。日数の計算は所定労働日だけを機械的に数える設計にせず、休業期間としての取扱いを人事担当者が確認したうえで計算します。
会社が法定を超える休業を設けている場合は、法定枠と会社独自の枠を分けて管理します。独自の休業を取得できることと、雇用保険の給付対象になることも別です。本人に渡す通知や残日数の表示も、何の残枠か分かる名称にしましょう。
取得日数は休業開始日から終了日までを数え、期間中の労働日ではない日も含みます。例えば暦で14日間の連続した休業を取る場合、土日を除いて10日として数える扱いにはしません。なお、他の事業主の下で取得した休業日数を現在の事業主での法定枠から差し引くものではありません。給付の受給履歴の確認とは分けて整理します。
分割する場面は本人の事情から検討する
分割取得は、介護に関わる複数の変化に対応するための選択肢になります。例えば、最初に退院後の支援を整え、後に支援内容の変更が必要になったときに再度休業を検討するという使い方が考えられます。これは架空の例であり、すべての人に同じ配分が適するわけではありません。
人事が先に日数の配分を指定するより、今回の休業で何を進めたいかを本人に聞くことが重要です。支援者との打合せ、家族との調整、住まいの準備など、必要な対応と時期を整理します。今後の状況が読めない場合は、分からないこともそのまま記録します。
残りの取得回数が少なくなったときは、利用を止める材料にするのではなく、復帰後に使える勤務時間の制度や休暇も改めて説明します。取得枠の説明と、本人に休業を控えさせる話を混ぜないことが大切です。
休業中の計画は本人・外部支援・会社に分ける
休業中の準備を「本人がすべて対応する作業表」にしないようにします。本人が相談すること、地域の窓口や介護の支援者と確認すること、会社が調整することを分けると、誰の回答待ちなのかが見えます。
下の表は編集部による整理例です。家族の詳しい健康状態や介護サービスの契約内容を会社に一式提出させる趣旨ではありません。会社が知る必要のある部分は勤務に影響する予定や連絡先に絞り、本人と共有範囲を確認しましょう。
| 本人が整理すること | 勤務を続けるうえで難しい時間帯、家族と話し合う事項、利用希望の制度 |
|---|---|
| 外部支援者と確認すること | 利用できる支援やサービス、開始見込み、状況変化時の相談先 |
| 会社が準備すること | 担当業務の引継ぎ、復帰時の勤務条件、制度申請と給与・給付の案内 |
| 共同で決めること | 次の連絡日、確認が必要な事項、見通しが変わった場合の連絡方法 |
予定が変わったら手続きと仕事を同時に見直す
介護の予定が変わると、休業の終了日や復帰時の働き方の見直しが必要になることがあります。休業終了予定日は、原則として終了予定日の2週間前までの申出で、1回の申出に係る休業につき1回、繰下げ変更できる仕組みがあります。適用する手続きを確認し、本人と会社で認識をそろえましょう。
一方、開始予定日の変更は、本人の申出だけで当然に変更できる定めではありません。自社の規程や本人との話合いを確認する必要があります。単に勤怠カレンダーを書き換えて済ませず、制度上の手続きと給付申請の資料への影響も確かめてください。
現場には新しい不在期間と引継ぎの変更点を伝えます。休業中に業務連絡が集中しないよう、通常の仕事の問い合わせ先と、人事が必要な手続きを案内する連絡先を分けておくと管理しやすくなります。
希望する開始日から休業するための申出は原則2週間前までです。急な事情で間に合わない場合も相談自体を断らず、制度上の開始日の扱いと、それまでの休暇・勤務調整を分けて案内します。事業主には、申出を受けた後、開始日・終了日等を速やかに書面等で通知する対応が必要です。
復帰前は残日数より、働ける条件を確認する
復帰前に確認するのは、介護が完全に落ち着いたかという一点ではありません。始業・終業の時刻、担当できる業務、急な連絡が入った場合の対応、利用する制度を具体的に確認します。未確定の事項があるときは、次に見直す日を決めましょう。
面談文例は「復帰後の勤務で、調整が必要な時間帯を教えてください。まだ決まっていないことは未定として整理し、会社で準備できることを確認します」です。本人だけに完璧な両立計画を求めず、職場の担当変更や会議時刻の見直しも検討します。
人事は、取得した日数・回数と、復帰後の支援計画の二つを残してください。法定枠の正確な管理と、勤務を続けるための調整を並行して行うことで、93日という数字だけにとらわれない案内ができます。
出典・参考資料
- 厚生労働省「介護休業」 ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省「介護休業の取得から復帰までのフロー」 ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省「仕事と介護の両立ポイント」 ↗確認日:2026年10月9日
- ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」介護休業給付の項 ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省「育児・介護休業法の施行について」第3・2(介護休業の回数及び日数) ↗確認日:2026年10月9日




