短時間勤務だけに限定せず、必要な調整を聞く
介護の短時間勤務を相談されたときは、まず何時にどのような対応が必要かを確認します。毎日の勤務時間を短くしたい人もいれば、勤務時間の長さは変えずに出勤時刻をずらしたい人もいます。本人の困りごとに合わない制度を勧めると、収入や仕事への影響が必要以上に大きくなる可能性があります。
法律上は「所定労働時間の短縮等の措置」として、短時間勤務以外にも選択肢が設けられています。会社がどの制度を採用しているかを確認し、育児の短時間勤務のルールをそのまま介護にも当てはめないことが大切です。
本記事では法定措置の概要と、制度を利用する際の実務を整理します。勤務変更の相談では、介護の予定に加えて業務の締切や引継ぎ先も確認します。本人が一人で職場の調整を完了してから申請する運用にしないようにしましょう。
会社が設ける措置の選択肢を確認する
事業主は、短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、介護サービス費用の助成その他これに準ずる制度から、一つ以上の措置を設ける必要があります。短時間勤務には一日の時間短縮だけでなく、週や月の時間・日数を短くする方法なども含まれます。
どれか一つの制度があれば、すべての相談をその制度で解決できるとは限りません。自社が採用する措置の法令適合性を確認したうえで、従業員の勤務形態に合うか検討しましょう。以下は各制度を比較するときの編集部の着眼点です。
| 短時間勤務 | 勤務時間を減らす必要があるか。業務量と賃金の扱いも合わせて整理する |
|---|---|
| 時差出勤 | 出退勤時刻をずらすことで対応できるか。会議や引継ぎの時刻を確認する |
| フレックスタイム | 日による予定の変化に対応しやすいか。労働時間管理の方法を確認する |
| 費用助成等 | 対象費用、申請資料、利用条件を明確にし、時間調整の必要性も別途聞く |
期間と回数は介護休業の残日数と分けて管理する
短時間勤務等の措置は、対象家族一人につき、利用開始から連続する3年以上の期間に2回以上利用できる制度とする必要があります。介護費用の助成措置については1回とすることが可能です。自社が法定を上回る利用期間や回数を設けている場合は、その内容も案内します。
この期間を、介護休業の93日から差し引くものとして表示しないようにしてください。管理表は休業の取得履歴と分け、制度の開始日、今回の利用期間、利用回数、変更予定日を記録する構成が考えられます。
また、対象から除外できる労働者の条件は制度ごとに確認が必要です。介護休暇の2025年の変更を、短時間勤務等の条件に一律に当てはめないようにします。本人に対象外と回答する前に、法令、自社規程、労使協定の三つを照合する手順を設けましょう。
法定の対象は日々雇用される人を除く労働者で、労使協定がある場合は継続雇用1年未満の人、週の所定労働日数が2日以下の人を除外できます。協定が存在するか、今回の措置を対象にした条項かを確認し、勤続期間だけで自動的に利用不可と判定しないようにします。
勤務時間が短くなった分の業務を決める
制度利用が決まったら、勤務時刻だけでなく業務の配分を調整します。短時間勤務になっても担当件数と締切を変えなければ、休憩中や帰宅後に仕事が移るだけになりかねません。業務の優先順位、本人が続ける仕事、他の人へ渡す仕事を具体的に整理しましょう。
例えば、夕方の定例会議に出られなくなる場合は、会議を前倒しする、報告を事前に共有する、別の担当者が参加するなどを比較します。これは編集部による調整例であり、制度利用者を重要な仕事から一律に外すことを勧めるものではありません。本人の意向も確認します。
上司は新しい勤務条件で求める成果と確認方法を説明し、人事は賃金や手当の扱いを本人へ案内します。制度利用の可否、仕事の割当て、賃金の計算が別々に進むと説明が食い違うため、開始前に三者で確認できる記録を作ると役立ちます。
本人との合意事項は、始業・終業時刻だけでなく、担当業務の変更内容も簡潔に書いて確認します。「周囲で適宜フォローする」という記載では、具体的な引継ぎ先が決まりません。締切のある作業には担当者を置き、問い合わせが来たときに本人へ戻さず対応できるかまで確認しましょう。
在宅勤務を選ぶ場合も仕事中の対応を曖昧にしない
2025年4月から、介護のためにテレワーク等を選べるようにする措置は事業主の努力義務となっています。短時間勤務等の選択的措置とは位置付けを分けて説明し、テレワークを導入しただけで他の法定措置を満たしたと判断しないようにします。
在宅で働く場合も、勤務中ずっと介護に対応できるとは限りません。連絡可能な時間、離席が必要な場合の勤怠処理、会議参加の方法などを確認します。自宅にいることを理由に、必要な休暇や勤務時間の調整が不要と決めつけないことが大切です。
制度案内の例は「在宅勤務の可否と、勤務時間の調整は別に確認します。仕事中に対応が必要な時間帯を伺い、利用できる制度を整理します」です。介護の作業を会社が監督するための質問にせず、勤務上の調整に必要な情報を聞く形にしましょう。
開始後に実際の勤務を見直す日を置く
制度を使い始めると、当初は想定していなかった会議や移動の負担が見えることがあります。編集部の提案として、開始時に見直し日を一つ決め、実際の勤怠、仕事の持ち越し、本人の負担を確認しましょう。見直しを制度利用の取消しの場にするのではなく、運用を調整する機会にします。
本人から「制度は使えているが業務が終わらない」と伝えられた場合は、勤務時間を元に戻す話だけでなく、担当範囲と締切を再確認します。支援する同僚の業務量も確認し、特定の人に仕事が集中していないかを見てください。
まず自社の選択的措置を一覧にし、制度ごとの申請先、期間、賃金の取扱いを確かめることから始めます。そのうえで、本人の必要な時間と職場の業務を照らし合わせ、続けられる勤務方法を具体化しましょう。
出典・参考資料
- 厚生労働省「短時間勤務等の措置」 ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省「法改正のポイント」 ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省「就業規則における育児・介護休業等の取扱い」 ↗確認日:2026年10月9日




