まず制度の有無と、実際の対応を分けて確認する
介護両立支援の法改正への対応は、就業規則の文言を直しただけでは完了しません。従業員が相談したときに誰が説明するか、40歳に達する従業員を誰が抽出するかまで決めて、日々の人事業務につなげる必要があります。
2025年4月から介護分野では、雇用環境整備、介護に直面した人への個別周知・意向確認、早い段階での情報提供が義務化されました。本記事は2026年10月に確認した厚生労働省資料を基に、これらの実施状況を点検する順序を整理します。
以下の担当分担や点検表は編集部の運用提案です。法令上必要な事項と、会社が使いやすさのために加える仕組みを分けて読むことで、未実施の義務を優先して改善できます。対象者がいなかった業務も、実施不要として終わらせず、次の対象者が出たときの準備を確認しましょう。
義務と努力義務を一覧で整理する
雇用環境整備は、研修、相談体制、社内の利用事例の収集・提供、利用促進方針の周知から一つ以上を実施する義務があり、複数の実施が望ましいとされています。一方、介護のためのテレワーク導入は努力義務です。すべてを同じ意味の「必須制度」として社内に伝えると、従業員への説明が不正確になります。
また、介護休暇では勤続6か月未満の人を労使協定で除外する仕組みが廃止されました。この変更を介護休業など別制度の除外要件にも一律に当てはめないよう、制度ごとに確認してください。古い申請画面の注意書きや入社時資料に条件が残っていることもあります。
| 雇用環境整備 | 法定の選択肢から一つ以上を実施。担当者と実施内容を確認する |
|---|---|
| 個別周知・意向確認 | 介護に直面した旨の申出を受けた人に個別対応する |
| 早期情報提供 | 40歳到達時等の所定の期間に制度・申出先・給付を案内する |
| 介護テレワーク | 選択できるよう措置を講じる努力義務。自社の検討と対応を整理する |
規程・案内・申請画面の三つを照合する
点検の最初は、最新の育児・介護休業規程、従業員向け案内、勤怠・申請システムを同時に開くことです。同じ制度の対象者、申出先、賃金の取扱いが一致しているか確認します。規程だけを修正しても、画面が申請を受け付けなければ利用につながりません。
編集部が勧める確認方法は、架空の相談者を一人設定して申請までたどることです。例えば「入社3か月で、家族の介護のために休暇を相談する人」を想定し、案内を探せるか、担当部署に連絡できるかを検証します。これは実在の利用実績ではなく、運用を確認するための例です。
不一致は、修正箇所、判断を確認する相手、対応期限の三項目で一覧化します。法的な対象判断が必要なものと、リンク切れや部署名の修正を分けると、担当者が止まらずに作業できます。
介護の申出を受けてからの受け渡しを決める
従業員は人事だけでなく、直属の上司に最初に相談するかもしれません。管理職には、家族の介護の話を聞いたときの連絡先と、本人に返す最初の言葉を共有します。詳細な制度判断をすべて管理職に委ねる運用は避け、説明できる担当へつなぎましょう。
案内文の例は「お話しいただきありがとうございます。勤務との両立に使える制度を人事から説明します。まず希望する連絡方法と、当面の仕事で困っていることを教えてください」です。介護休業の申請が確定していなくても、介護に直面した旨の申出を受けた際の対応として整理します。
人事は個別周知と意向確認の実施を確認し、職場側は仕事の調整を担当します。どこまで情報を共有するかも本人と確認し、家族の詳しい病状を部署全体に伝える必要があると決めつけないことが大切です。
記録には実施日と次の対応を残す
記録の形式を複雑にする必要はありません。編集部の提案では、実施対象、案内日、案内方法、使った資料の版、担当者、追加対応の有無を共通の管理項目にします。これらすべてを法定様式として求めるものではなく、対応漏れを防ぐための設計です。
個別相談の内容と、全社施策の実施記録は保管場所や閲覧権限を分けると管理しやすくなります。経営会議に報告する際は、人数や未対応件数などに集約し、家族の氏名や病歴を含む資料をそのまま転送しない運用にしてください。
40歳情報提供の対象者を毎月抽出する会社なら、送付できなかった人や休職中の人への対応も同じ一覧で追います。「送付済み」の件数だけを見ると、対象抽出自体の漏れを見逃すため、対象者数と実施人数の両方を照合します。
点検の担当者が交代しても同じ確認ができるよう、記録には根拠となる資料の保存先も付けます。研修で雇用環境を整える場合なら、実施日だけでなく使用資料や対象者への案内を確認できるようにします。資料を作成した段階と、実際に従業員へ届けた段階を区別すると、準備中の施策を実施済みと数える間違いを防げます。
点検結果から今月の改善を三つに絞る
点検後は、義務への未対応、従業員が利用できない不具合、説明の分かりにくさの順に対応を整理します。例えば「旧除外条件の削除」「40歳情報提供の担当設定」「上司から人事への連絡手順の共有」の三つを先に終えると、次の研修や資料改善につなげやすくなります。
実施したことは、更新した規程だけでなく、利用者が見る画面と担当者の手順でも確認しましょう。社内の制度を厚生労働省の規定例と比較し、解釈に迷う箇所は社会保険労務士や都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確認します。
最初の一歩は、担当部署を一つ決め、現行資料を集めることです。チェックリストを使って未対応箇所と期限を共有し、その後に個別周知と40歳情報提供の詳細な運用を整えてください。
出典・参考資料
- 厚生労働省「法改正のポイント」 ↗確認日:2026年10月9日
- 厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」令和8年3月詳細版 ↗確認日:2026年10月9日




