介護規程は本文と運用資料を一緒に見直す

介護の就業規則を見直すときは、育児・介護休業規程だけでなく、労使協定、賃金規程、申請書、勤怠システムの設定を集めるところから始めます。同じ制度の条件が資料ごとに違うと、担当者がどれを優先すべきか分からなくなります。

厚生労働省は規則の規定例を公開しており、2026年3月作成の詳細版も確認できます。ただし、規定例をそのまま置き換えると、自社が法定以上に設けている休暇や有給の取扱いを見落とす可能性があります。現在の制度と差分を確認して改定することが重要です。

本記事は、人事担当者が確認資料をそろえ、専門家へ相談しやすくするための作業手順です。個別企業にそのまま適用する規程のひな形ではありません。法令上の条件、会社独自の上乗せ、担当部署の運用ルールを分けて整理します。

最初に対象者・手続き・期間を照合する

各制度について、誰が対象か、いつどこへ申し出るか、どの期間利用できるかを横並びにします。介護休業、介護休暇、短時間勤務等、各種労働時間の制限を一つの「介護制度」の条件でまとめず、別の行として比較してください。

特に2025年4月の改正で廃止された、介護休暇の勤続6か月未満の除外が残っていないか確認します。規程の本文だけでなく、労使協定や申請書の注意欄にも旧条件がないか見てください。一方、他制度の除外条件を同時に一律削除する判断はしないようにします。

比較表には、現行条文、公式規定例の対応箇所、相違点、確認する相手を記入する方法が考えられます。法定を下回る可能性のある箇所と、自社の上乗せを維持する箇所を分けると、改定の意図が明確になります。

相違点には「削除」「修正」「維持」「要確認」の区分を付けます。例えば自社で有給としている介護休暇は、規定例と文言が違っていても、直ちに無給へそろえる理由にはなりません。変更が従業員の条件にどう影響するかを確認し、単なる書式の統一と制度内容の変更を別の判断として扱ってください。

労使協定は規程とは別の文書として確認する

就業規則に「労使協定で除外した者」と書いてある場合は、実際にどの協定が締結されているか確認します。規程の文言だけを見て、その除外が適用できると決めつけないことが大切です。協定の対象制度、対象者、有効期間などを確認しましょう。

介護の制度ごとに、労使協定による除外があるものと、法令上の対象外要件が定められているものがあります。人事担当者のチェック表では、この違いを明示します。古い協定を新しい様式に移す際は、削除・変更した条項の理由を記録しておくと、後から確認しやすくなります。

締結や変更に必要な手続きは、自社の労働組合や労働者代表の状況も踏まえて専門家に確認します。従業員への説明前に、文書を作る担当と手続きを行う担当を決め、署名等が必要な作業を見落とさないようにしてください。

賃金と評価は制度の説明と矛盾しないか見る

休業や休暇中に給与を支払うか、勤務時間を短縮したときにどのように計算するかは、従業員が利用を判断するために必要な情報です。規程の説明と給与担当の計算方法が一致しているか確認しましょう。

厚生労働省の規定例の解説では、実際に働かなかった期間に対応する取扱いと、それを超えて不利に扱うことを区別しています。例えば、制度利用を理由にした一律の評価低下や、休業期間を超える控除などは、単に「社内ルールだから」と処理せず、適法性を確認する必要があります。

編集部の提案として、給与の計算例を一件作り、規程、従業員への案内、給与明細に相当する説明の三つを照合します。架空の計算例は検証用と明示し、実際の給与額を公開資料に転用しないようにします。給付の案内も、会社の賃金支払とは別に表示してください。

法定の対応と社内マニュアルを役割で分ける

規程には制度の対象や手続きなどを明確にし、担当者の細かな対応手順は運用マニュアルへ整理する方法があります。ただし、何をどちらへ記載するかは必要記載事項を踏まえて判断し、マニュアルに移したことで規程の記載が不足しないよう専門家に確認してください。

次の表は、改定作業で確認する資料の例です。規程を確定させる前に、現場の管理職や給与担当へ運用上の不明点を聞くと、施行後に相談先が分からなくなる事態を避けやすくなります。

就業規則・育児介護休業規程 対象、申出、期間、勤務条件と関連条項の整合
労使協定 制度ごとの除外対象、改正後の条件、締結状況
賃金規程・給与手順 有給無給、短縮時間の取扱い、控除方法と本人への説明
周知資料・申請システム 最新の条件、担当部署、必要書類、実際に申請できる画面

改定後は一件の相談を想定して動作を確かめる

文書が完成したら、必要な意見聴取や届出、周知等の手続きを確認して進めます。改定日と適用日を明確にし、古い資料を見た従業員から質問が来た際に説明できるよう、変更点を短くまとめておきましょう。

運用確認では、架空の相談を使って、管理職への申出から人事の説明、申請、給与処理までたどります。例えば介護休暇を時間単位で申し出た場合に、規程上の扱いと画面の入力方法が合っているかを確認します。この検証は実際の従業員の勤怠を書き換えずに行います。

規程の更新だけでなく、関係者が新しい資料を使える状態を完了条件にしてください。最初の作業として、現行の規程と最新の公的規定例を並べ、相違点を一枚にまとめると、専門家への確認と社内の意思決定を進めやすくなります。

常時10人以上の労働者を使用する事業所では、就業規則の作成・変更を所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要があります。育児・介護休業規程を別冊にしている場合も、就業規則の一部として扱います。会社全体の人数と事業所の人数を混同せず、必要な手続きを確認してください。

出典・参考資料