40歳の介護情報提供は、制度を思い出せる入口を作る

40歳の介護情報提供で伝えるべきことは、介護保険料の徴収が始まるという説明だけではありません。勤務先で使える両立支援制度、申出先、介護休業給付について知ってもらい、家族の介護に直面したときに相談へ進めるようにする取組です。

2025年4月から、事業主には40歳到達時等の所定の期間に情報提供する義務があります。まだ介護をしていない人も対象になる仕組みなので、介護経験の有無を事前アンケートで選別してから案内する運用にはしません。

本記事では厚生労働省が示す要件を確認したうえで、対象者リスト、配布資料、対応記録をつなぐ運用を提案します。家族の状況を会社へ詳しく申告してもらうことが目的ではありません。必要なときの連絡先を、本人が自分で見つけられることを目指します。

年度方式か誕生日方式かを決める

情報提供の期間には二つの選択肢があります。40歳に達する日である誕生日の前日を含む年度か、40歳の誕生日からの1年間です。自社の人事システムで対象抽出しやすい方式を決め、運用手順にも残しましょう。

年度方式はまとめて案内しやすい一方、年度途中の入社や休職者の扱いを確認する必要があります。誕生日方式は毎月の対象者抽出に組み込みやすいものの、担当者が不在の月も実施できる仕組みが必要です。いずれも、実施漏れを後から見つける照合が欠かせません。

年齢到達日と誕生日は同日ではないため、境目に当たる人を単純な年齢フィルタだけで抽出しないよう注意します。就業規則の年度と同じ区切りを使う場合を含め、対象期間の設定は公式資料と照合してください。

年度を単位にする運用 誕生日前日を含む対象年度で管理し、途中入社等の追加確認日を設ける
誕生日を単位にする運用 誕生日から1年間を対象期間として、月次の配布と未実施照合を行う
共通の確認 名簿の抽出条件、配布責任者、不在者への連絡方法を決める

配布資料には制度・申出先・給付を一緒に載せる

案内の中心になるのは、自社の介護休業や介護両立支援制度、制度利用の申出先、介護休業給付に関する情報です。介護保険制度も併せて知らせることが望ましいとされています。社内制度の案内を省いて介護保険のパンフレットだけ配る構成にはしないでください。

資料は「今すぐ全部覚えるもの」ではなく、「困ったときに開き直せるもの」として設計すると読みやすくなります。最初のページに相談先を示し、その次に短く休む場合、まとまって休む場合、勤務時間を調整する場合の入口を置きます。給付の受給には要件があることも明記します。

社内イントラネットを見られない従業員に同じ説明が届くかも確認しましょう。管理職向けの長いマニュアルをそのまま配るより、従業員向けの案内と詳細な規程を役割に応じて分ける方が、相談先を探しやすくなります。

また、相談先を案内するリンクは配布前に担当者以外の人が開いて確認します。閲覧権限が人事に限定されたフォルダを指定していると、本人は資料を読めません。紙で配る場合も、部署の代表電話や連絡可能な時間を載せるなど、案内を受け取った人の利用環境で確認してください。

案内文には配布目的と相談先を明記する

次は案内文の例です。社内制度名や窓口を実際の情報に置き換え、必要事項を記載した資料と一緒に使います。

「40歳を迎える皆さまへ、仕事と家族の介護を両立するための制度をご案内します。介護休業、介護休暇、勤務時間に関する制度、申出先、介護休業給付の概要は添付資料をご覧ください。現在、介護をしているかどうかにかかわらずお知らせしています。制度利用を検討する場合や働き方に不安がある場合は、人事の介護相談担当へご連絡ください。」

これは編集部による文例で、法定様式ではありません。件名を単に「福利厚生のお知らせ」とするより、後から検索できるよう介護と相談先の語を入れることを勧めます。資料の末尾にも改訂日と問い合わせ先を載せ、担当者名だけが古く残らないよう、部署の共通窓口を使えるか検討しましょう。

配布方法と不達時の対応を決めておく

情報提供は面談、書面交付、FAX、電子メール等で行えます。40歳等の情報提供では、FAXや電子メール等の利用に本人の希望を要するという条件はありません。一方、介護に直面した人への個別周知・意向確認でこれらを使う場合は本人の希望が必要です。単に社内サイトに掲載しただけで対象者への対応が完了したと扱わず、本人へ提供する経路を決めます。

編集部の運用案では、対象者名簿と配布記録を照合し、メールの不達、紙資料の未交付、休職などで連絡がついていない人を次回確認の対象として残します。閲覧確認を求める場合も、家族の介護状況まで回答必須にする必要はありません。

実施記録には、配布日、方法、資料の版、担当者を残すと、問合せ時に説明を再現できます。法定の一律保存様式を意味するものではなく、会社として説明内容と対象者の漏れを確認するための提案です。

一度の案内を全社員への相談導線につなげる

40歳時点で読んだ資料が、数年後に必要になることもあります。配布の後も、社内の相談先と制度一覧を探しやすい場所に置き、窓口変更時には案内を更新しましょう。これは40歳情報提供を継続的に役立てるための編集部提案です。

40歳以外の社員から相談が来た場合も、年齢を理由に対応を後回しにしないよう管理職へ伝えます。年齢で設定される情報提供の時期と、実際に介護に直面した際の個別対応は別の業務として管理してください。

まずは次の対象期間の名簿を試しに抽出し、年度の境目にいる人や途中入社者を人事担当同士で照合してみてください。そのうえで、資料に三つの必要事項があるか、配布後に相談へ進めるかを確認すると、運用を始めやすくなります。

出典・参考資料